銀のスプーンをくわえて生まれてきた子どもは幸せになる

代ギリシャの時代からすでに使われていたという説もあるほど、古くから人間の食生活には欠かせないスプーン。テーブルに置かれた食材を手で取り分けて食べていた時代も、汁物を口に運ぶスプーンは欠かせないものでした。私たちの体を作る食べ物を口に運ぶ食具は、古くから神聖なものと考えられてきましたが、スプーンはまさにその代表格。人間の暮らしに寄り添い、私たちを支えてくれる名脇役といえるでしょう。赤ちゃんが最初に使う食器がスプーンなのも、納得できますね。

ビースプーンにはさまざまな素材のものがありますが、どうして銀のベビースプーンを贈る習慣ができたのでしょうか。
古来、銀は魔を退ける力があると考えられてきた金属です。これは強い酸や硫黄など人体に有害な物質に即座に反応して黒く変色することから発想されたものといえますが、この作用を利用して、王侯貴族の毒見用の食具に利用されたことからも、深く信頼されてきた歴史がわかります。美しいだけでなく有害なものを見分け、私たちを守ってくれる銀。そんな銀という金属が持つ特性から、お子様の将来の幸せを祈るのにふさわしいものと考えられていったのでしょう。
もちろん、銀は小さな赤ちゃんにも口当たりやさしく、いつでも清潔を保てる素材です。磨けば常に美しい光沢を保て、傷がつけば修理を承ることも可能。小さい頃から銀の食具を持たせることで、本物がかもしだす上質さを肌で感じ取れる子に成長することでしょう。

米のお誕生や洗礼式に際してシルバーベビースプーンを贈る風習は日本でも共感され、また皇室で親王様、内親王様がお生まれになった折に銀のスプーンが贈られたことがメディアで取り上げられるにつれ、広く一般にも浸透し、今では、ベビーギフトの定番となっています。
生後100日目ごろに行う「お食い初め」の折、まだお食事は食べられませんが、この銀のベビースプーンを儀礼的に赤ちゃんのお口に含ませるという方も多いようです。日本古来の行事と西洋の習慣がミックスしたような方法ですが、子どもの幸せを祈る気持ちは世の東西を問わず同じもの。新しい伝統のスタイルが生み出されつつあるといえるでしょう。

古くから使われていたスプーンですが金属製のものは一般には流布しておらず、特に貴金属製の食具は大変貴重で、王侯貴族が代々財産として継承するものでした。16~17世紀、イギリスでは「使徒のスプーン」という贈り物が流行するようになります。
これは、スプーンの柄にキリストの十二使徒のひとりをかたどった彫刻が施されたもので、洗礼を受けた子どもの名付け親がその子のクリスチャンネームにちなんだ守護聖人を彫って記念に贈る習わしです。
当時のイギリスは大航海時代の波に乗って世界中の富が集まる場所でした。豊かな階級は、蓄財性の高い銀の食器・食具を使用していましたので、当然これらのスプーンも銀で作られました。これが、銀のスプーンのことわざのもととなり、洗礼時の贈り物の風習とともに現代へと伝えられたのです。

宮本商行では、当社で販売したベビースプーン等の修理を承ることがあります。損傷の激しい場合、本来なら新しいものと交換したほうがよろしいものでも、あえてご指定箇所のみを修理し、「他の部分の傷は直さないでおいて」とご要望されるお客様もいらっしゃいます。多くのベビースプーンを扱ってきた当店でも、そんな時はちょっと緊張します。当社で販売したものでも、実際にお子様が使用されたことで、他には替えがたい、思い出がいっぱい詰まったお品になっているのですから。もちろん、お客様のお望みどおりの修理が出来上がり、お渡ししたときのお客様の笑顔は、私たちにとってなによりもうれしいものです。